オペ室ナースの勉強blog

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肺動脈カテーテルの構造、挿入方法は?基礎を学ぼう!

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今日は肺動脈カテーテル(PAC)の構造、挿入方法、合併症などの基礎について勉強します。


挿入方法なんて看護師が入れるわけじゃないし覚えなくてもよくない?と思うかもしれませんが
周術期管理チームの過去問でたびたび登場するんですよね〜



ちなみによく見るスワンガンツカテーテル(SG)はエドワーズライフサイエンス社登録商標で、PACの種類のひとつです。


他にも心房心室のペーシング機能のついたPACなんかもあります。


心臓手術をしていない病院も多いので、見たことがないという方もいるかもしれませんね。


私の病院は開心の手術ではルーチンで入れますが
知り合いの心臓血管手術専門の病院では開心でもほとんど入れないそうです。




スワンガンツカテーテルの構造


現在日本で使用されているPACのほとんどがSGなので
今回はSGで説明していきます。


SGの長さは110cm、先端に容量1.5mLのバルーンがついています。


先端部に開口する肺動脈ルーメン(黄ライン
先端から30cmのところに開口する右房ルーメン(青ライン
バルーン拡張用ルーメン(赤ライン)があります。

これらに加えて、輸液用のルーメンがついている種類もあります。


肺動脈ルーメンと右房ルーメンのハブを圧トランスデューサに接続することで、圧波形や数値としてモニタに表示できます。



さらに連続心拍出量測定(CCO)のためのサーマルフィラメント、
温度測定用のサーミスタ、
SvO2測定用のオプティカルモジュールの3つのコネクタがついています。


それぞれのコネクタを専用のモニタリング装置(ビジランス、ヘモスフィア)に接続すれば、心拍出量、SvO2、血液温が表示されます。

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画像はエドワーズライフサイエンス社より




コネクタ類の部分がややこしいと思うので、何をどのように測定しているのか簡単に説明します。

連続心拍出量(CCO)測定


最近のPACは、先端から15cmあたりからサーマルコイルが約10cm巻かれていて

軽度の加温冷却による温度変化を先端センサーで感知して、CCOを表示する機種が一般的です。


ただCCOは直前の3~15分間計測してその平均値を表示しているので
タイムラグがありリアルタイムの値ではないことを覚えておいてください。



また熱希釈法で心拍出量を測定する方法もあります。

カテーテルの側孔(右房ルーメン)から注入した冷却水の温度変化を先端のセンサーで感知して測定します。

SvO2(混合静脈血酸素飽和度)連続測定

カテーテル先端部から近赤外光を血管内に照射し、赤血球に反射して戻ってきた光を感知して測定しています。

SpO2の測定原理と似ていますね。

肺動脈血は上大静脈、下大静脈、冠静脈洞から戻ってきた総静脈血です。

その酸素飽和度は、体全体の酸素需給バランスを表しています。


SvO2については次回詳しくやります。




挿入部位


内頸静脈が第一選択になります。

術中に出し入れするときも操作しやすく、術後の管理もラクだからですね。

その他に鎖骨下静脈、大腿静脈、肘静脈が選択されます。



挿入方法


挿入前にPACの圧のゼロ校正をしておきましょう。




シースからPACを挿入し、約20cmでバルーンに空気を1~1.5mL程度注入し膨らませます。

その時点で上大静脈(SVC)から右房(RA)近辺に先端が位置します。


そのまま血流にのせて、ゆっくり進めていきます。

30~35cm程度で先端が右室(RV)に入ります。波形が大きな波に変わるので分かります。


さらにゆっくり進めると35~45cm前後で肺動脈(PA)に楔入した圧波形に変わります


バルーンの空気を抜いて、その深さから2~3cm引き抜いた位置で固定をします。



波形はこのように変わります。

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PACがスムーズに挿入できない時は体位を変えるといいそうですよ。

RVへ挿入するには頭位を下げて右側臥位へ、

PAへ挿入するには頭位を上げて右側臥位にすることで進めやすくなるそうです。




PACやSGは過去問にもたびたび登場します。

上記を踏まえて過去問を2問解いてみましょう😊


過去問① 肺動脈カテーテルの挿入経路

********

肺動脈カテーテルの通過経路として正しいのはどれか。(2つ選択)

(1) 内頚静脈→上大静脈→右房→右室→肺動脈
(2) 総頚動脈→大動脈 →左室→右室→肺動脈
(3) 総頚動脈→大動脈 →左室→左房→肺動脈
(4) 大腿動脈→大動脈 →左室→左房→肺動脈
(5) 大腿静脈→下大静脈→右房→右室→肺動脈

********


答えは1と5です。これは簡単ですね〜!


設問234のツッコミどころは満載ですけど
特に設問2の左室→右室とか笑えますね(笑)
そこ突き抜けちゃう?!





次の問題いきましょう✨

過去問② 肺動脈カテーテル挿入手順

********

右内頚静脈から肺動脈カテーテルを挿入した。穿刺部位からの距離について正しいのはどれか。(3つ選択)

(1)約 10 cm でバルーンに空気を注入する。
(2)約 20 cm で上大静脈から右房近辺に先端が位置する。
(3)約 30~35 cm で右室に先端が位置する。
(4)約 35~45 cm で肺動脈に先端が位置する。
(5)肺動脈楔入圧波形を確認した位置で固定する。

********





答えは234でした!



みなさん解けましたか?

分からなかった方はもう一度戻って振り返ってみてくださいね。



PAC挿入に伴う合併症


内頸静脈穿刺に伴う合併症はCVと同じです。

(動脈穿刺、気胸、感染など)


こちらの記事も参考にしてください。
molsama.hatenablog.com


不整脈


挿入時に上室性、心室不整脈、時に重篤不整脈(VT、VFなど)が起こることがあります。


弁尖や血管の損傷

バルーンを膨らませた状態で三尖弁から引き抜くと、弁尖を損傷することがあります。

また、左内頸静脈からの挿入で無名静脈を損傷することもまれにあります。


余談ですが、SGの波形が出ないと思ったら右房を突き抜けて飛び出ていたという症例があったと先輩に聞きました😅

滅多にないとは思いますが(笑)


肺穿孔、肺損傷

最も重篤な合併症です。

肺動脈楔入圧(PAWP)を測定したあとに必ず2~3cm引き抜くことが大切です。







今回は肺動脈カテーテルの基礎について学びました。

次回はスワンガンツでわかる数値の読み方、心係数やフォレスター分類などを詳しく勉強したいと思います。


今日はここまでー✨✨








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