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術後のせん妄が起こった時はどうする?予防法も知っておこう

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前回は覚醒遅延と覚醒時の興奮がなぜ起こるのか説明しました。
molsama.hatenablog.com


今回はその続きでせん妄についてです。
出来れば出会いたくないですよね〜💦

この前後輩から聞いた話ですが、夜勤中に病棟の応援に呼ばれ何かと思ったら
「せん妄の患者さんに手が取られるから見といてください」と。

そんなことで呼ぶな!という愚痴でしたが
術後の患者さんを見る病棟は大変だろうな〜と思います。

今日はせん妄について勉強していきましょう✨

せん妄とは?どのくらいで治る?

数時間から数日という短い期間で発症します。


症状は認知症のような記憶障害や失見当識、錯覚や幻覚を見ることもあります。

せん妄というと興奮しているイメージがありますが、目立っているだけで実はそんなこともないんです。

せん妄の25%が興奮性、残り75%は低活動性です。

低活動性というのは日中の活動性の低下、意欲低下やうつ、傾眠傾向になるなどです。

低活動性の方が予後が悪いと言われます。


せん妄は治療に非協力的になったり、興奮でバイタルが乱れたり、隠れた身体症状があったりで、周術期の合併症が増え、回復期間や入院期間が延びると言われます。

せん妄の合併により死亡率を2倍程度高めるという報告もあるとか!
甘く見てはいけませんね。


多くは一過性で、10日~12日で元に戻ります
特に高齢者の場合は1ヶ月以上続くこともあります。

せん妄はなぜ起こるの?

ひとつではなく様々な要因が影響しあって起こることが多いと言われます。

分類すると直接因子、誘発因子、準備因子の3つに分けられます。


直接因子というのは、薬物(鎮静薬、鎮痛薬、向精神薬、抗コリン薬、ステロイドなど)、臓器障害、代謝異常など

誘発因子というのは、集中治療室や回復室などの環境、ラインやモニター類、身体抑制(股関節オペ後など動けない状況も含む)など

準備因子というのは、高齢者、認知症、脳血管障害、パーキンソン病などの基礎疾患です。


このような要因が多いほどせん妄のリスクが高まるというわけです。

周術期の患者さんはかなり当てはまりますよね。


一般的に身体疾患で入院する患者の10~30%、高齢者の場合は10~40%程度にせん妄が発生すると言われていて
麻酔・手術後や集中治療中はこの割合がさらに増加します。

せん妄の対処と治療

まず予防に努める

せん妄を発症してしまうと治療は困難なことが多いので、可能な限り上で述べた要因を取り除いてあげて予防することが大切になります。


手術室や術後回復室、集中治療室などのように
昼夜が分かりにくく常にモニター音やアラーム音などのある環境は特にせん妄の要因になりますが、
逆にコミュニケーションや刺激がほとんどない環境も要因となるので、適度に声をかけるようにします。

また身体症状が要因となることが多いので、苦痛があれば出来る限り取り除き、身体症状の改善に努めます。

せん妄患者さんへの接し方

予防してもせん妄が起こってしまったら、まずは患者さんの安全第一です。

ラインやドレーン類の抜去、転倒転落に注意し、必要時抑制します。
ただし抑制自体もせん妄の要因になるので、最小限とします。


せん妄を起こしている患者さんは通常よりも理解力が低下しているので、落ち着いてゆっくりとわかりやすい言葉で接し、できるだけ不安や混乱を取り除くようにします。


またせん妄の要因が何かを考え、可能な限り取り除きます。

身体症状などの要因を無視して薬剤投与のみを行っても根本的な治療にはならないということを覚えておきましょう。

せん妄の治療薬

興奮性で危険な時のみ使用します。

非定型型向精神薬セロトニンドパミン拮抗薬など)

従来の向精神薬に対して錐体外路症状や心血管系の副作用が少ないリスペリドン(リスパダール®️)、クエチアピン(セロクエル®️)などがせん妄の初期治療に用いられることが多いです。

これらの薬は統合失調症の第一選択としても用いられています。

定型型向精神薬ドパミン受容体拮抗薬)

従来から用いられているハロペリドールセレネース®️)やドロペリドール(ドロレプタン®️)などの向精神薬です。

錐体外路症状の副作用を起こすことがあり、パーキンソン病には禁忌です。

抗不安薬マイナートランキライザー

ベンゾジアゼピン系薬剤(よく見かけるのはジアゼパムセルシン®️)やミダゾラムドルミカム®️)など)は、興奮などの迅速な治療として用いられることがあります。

またアルコールや薬物が原因のせん妄に対しても効果的なことがあります。

呼吸抑制や循環抑制に注意して観察することと、それ自体がせん妄や脱抑制による興奮を引き起こすことがあるので注意しましょう。


過去問 術後せん妄

周術期管理チーム認定試験2018年より

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術後せん妄について正しいのはどれか。(3つ選択)

(1)認知症が悪化した状態である。
(2)様々な要因が影響し合って起こる。
(3)数時間から数日という短い期間で発症する。
(4)高齢者に手術侵襲が加わると発生率は倍増する。
(5)低活動型せん妄は,活動型せん妄より予後はよい。

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答えは 234です。解けましたか?😊



今回は2回にわたって術後の覚醒状態について勉強しました。

予防方法、対処方法がわかったはずなので、気をつけていきましょうね。

今日はここまで!




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今回の記事はこちらの本を参考にしています。
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