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スワンガンツカテーテルの基準値と評価の仕方【永久保存版】

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前回、肺動脈カテーテルの挿入方法、合併症などの基礎を学びました↓

molsama.hatenablog.com




今回はスワンガンツカテーテル(SG)でわかる項目の基準値や、それらの評価の仕方について詳しく学んでいきましょう!


※そういえば前回の記事で、スワンガンツカテーテルをビジランスモニターに繋ぐと言いましたが、調べたら現在はビジランスは製造中止となりヘモスフィアという商品に変わっているみたいです。
失礼しました。



今回は長編でがっつりなので
気になる項目があれば目次から飛んでくださいね✨


過去問 スワンガンツカテーテルでわかること


まずは一問腕試しに解いてみましよう。

********

肺動脈カテーテル(Swan-Ganz カテーテル)で直接測定できる項目はどれか。 (3つ選択)
(1) 右房圧
(2) 左房圧
(3) 左室圧
(4) 肺動脈圧
(5) 肺動脈楔入圧

********



答えは 145ですね。

2と3は間接的にわかることなのですが後述します。



SGで得られる測定項目と基準値



RAP(右房圧)/CVP(中心静脈圧)

2~6mmHg(平均4mmHg)


右房圧はSGカテーテルの先端から30cmほどに開口する青ルーメンから測定できます。

中心静脈圧と位置が近く遮る弁もないので、RAPとCVPの圧は同じと思っていいです。


上昇:循環血液量増加、うっ滞、右心不全心タンポナーデ

低下:循環血液量減少、末梢血管拡張など



RVP(右室圧)

15~25/0~8mmHg


カテーテルの先端を右室にすれば測定可能です。


上昇:PAP上昇、肺高血圧、肺動脈狭窄、右心不全、右心梗塞、心タンポナーデ



PAP(肺動脈圧)

15~25/8~15mmHg(平均10~20mmHg)


上昇:肺うっ血、肺高血圧、肺塞栓症など

低下:循環血液量減少


PAWP(肺動脈楔入圧)

6~12mmHg


上昇:左心不全、循環血液量増加

低下:循環血液量減少

ポイント◎肺動脈楔入圧でなぜ左心系が評価できるの?


肺動脈楔入(せつにゅうと読みます)圧とはそもそも何かというと

肺動脈カテーテルを挿入する際
先端のバルーンを拡張させた状態でカテーテルを肺動脈まで進めます。

そうしてバルーンが進まなくなった地点、
つまりバルーンによって肺動脈の血流が遮断された状態の圧、それが楔入圧です。


肺動脈が楔入された状態だと
肺動脈→肺毛細血管→肺静脈→左心房まで遮るものがなくなるので、左心房圧と等しくなります。


その状態で僧帽弁が開いた時はさらに心室まで遮るものがなくなるので、左心室の拡張期終末圧と等しくなります。


このことから肺動脈楔入圧は左心室の容量、圧負荷を評価する指標となります。


※肺動脈の血流を遮断しているので、測定後は速やかにバルーンを収縮させます。


SvO2(混合静脈血酸素飽和度)


60~80%


上昇:高濃度酸素吸入、肺動脈カテーテル楔入状態、敗血症、低体温、左→右シャントなど

低下:心拍出量減少、酸素需要増加、酸素供給減少など


ポイント◎SvO2でどのように組織酸素代謝を評価するの?


肺動脈の血液(混合静脈血)というのは、全身に酸素を運び終えて戻った血液の最終地点です。


SvO2=SaO2※動脈血酸素飽和度-VO2※酸素消費量 /(1.34×Hb×CO※心拍出量)

の計算式なのですが、そんな難しい話ではありません。


要するにSvO2の決定因子というのは

この計算式に出てくる4因子:動脈血酸素飽和度、酸素消費量、ヘモグロビン値、心拍出量
なわけですね。


この中で動脈血酸素飽和度とヘモグロビン値と心拍出量は血ガスやSGなどで測定できます。


動脈血酸素飽和度、ヘモグロビン値、心拍出量のどれかが異常値なせいでSvO2も異常値になっているのなら、その原因となっているところを改善したらいいわけです。


そして、動脈血酸素飽和度、ヘモグロビン値、心拍出量が正常なのにSvO2が低下していたら

組織での酸素消費量が大きいということ、


逆に動脈血酸素飽和度、ヘモグロビン値、心拍出量が正常なのにSvO2が上昇していたら

組織の酸素消費量が小さいと評価できます。


SvO2が異常値であったら、これらの因子のなにが原因かを判断し、組織の酸素化を評価することができるのです。


CO(心拍出量)

4~8L/分


上昇:感染性ショック、循環血液量増加など

低下:心収縮力の減退、循環血液量減少など


CI(心係数)

2.5~4.2L/分/m2


値の評価は心拍出量と同じです。


ポイント◎COとCIはどう違う?


COとは心臓が1分間に血液を駆出する量で

CO=HR(1分間の心拍数)×SV(1回拍出量)

です。


体格によって循環血液量が変わるように心拍出量も体格により異なるので

体格による心拍出量を補正し、どんな体格の患者さんでも同じように心拍出量を評価できるようにしたのがCIです。


CI=CO÷BSA(体表面積)

で求められます。


ポイント◎フォレスター分類で心不全の評価ができる


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※循環器用語ハンドブックより


CIとPAWPをこの図に当てはめれば

心不全の状態を評価し治療方針を決定することができます。


Ⅱは肺うっ血、Ⅲは末梢循環不全を表し

IVはⅡとⅢ両方を満たす最も悪い状態ですね。


SVR(体血管抵抗)、SVRI(体血管抵抗係数)

SVRは900~1200dynes/秒/cm5

SVRIは1970~2390dynes/秒/cm5/m2


上昇:循環血液量減少、低血圧、交感神経刺激など

低下:感染性ショックによる末梢血管拡張(warm shock)など


ポイント◎体血管抵抗係数は左心系の後負荷の指標


CIの時と同じようにSVRを体格補正したのがSVRIです。

末梢循環と後負荷(心室から血液を送り出す時にかかる抵抗)の指標となります。


循環血液量の減少や交感神経緊張により末梢血管が収縮しSVRIが上昇します。

後負荷が増大している状態が持続すると心臓が疲弊しCOが低下してしまうので

輸液負荷や血管拡張薬投与、四肢の保温を行います。


PVR(肺血管抵抗)、PVRI(肺血管抵抗係数)

PVRは<250dynes/秒/cm5

PVRIは<285dynes/秒/cm5/m2


上昇:低酸素による肺血管収縮、肺血管病変による圧迫、交感神経刺激など

低下:NO吸入など


ポイント◎肺血管抵抗係数で肺循環にかかる負荷を評価する


SVRIと同様、PVRを体格補正したのがPVRIです。

PVRIはPAPとともに右心系の後負荷の指標となります。

上記に書いたように、肺血管の収縮や病変など、肺血管に問題がないか評価することができます。


低下の要因にあるNO吸入というのはどういうことかというと

NOというのは一酸化窒素で、肺血管を選択的に拡張させる効果があり

肺高血圧症に対してPAP低下や酸素化の改善を目的に治療に使用されることがあります。



最終問題 肺動脈カテーテルまとめ


2回にわたる肺動脈カテーテルの勉強を振り返って解いてみましよう!


********

肺動脈カテーテルモニタリングの有用性について誤っているのはどれか。 (2つ選択)

1)肺動脈カテーテルの熱希釈法による心拍出量測定は信頼性が高い
2)肺動脈収縮期圧は左心機能評価に有用である
3)連続心拍出量測定はリアルタイムで有用性が高い
4)中心静脈酸素飽和度測定は体酸素需給バランスを把握できるため有用である
5)ペーシング機能を持ち合わせた肺動脈カテーテルもある

********





答えは2と3でした!

2は肺動脈楔入圧か、左心拡張期終末圧と書かれていれば正解でした。

3は前回の記事で、リアルタイムではなくタイムラグがあると勉強しましたね。



まとめ

今日はスワンガンツカテーテルで評価できることについて勉強しました。

見慣れない方には難しかったかもしれませんね。


今日は内容量が多かったので、私も記事を作成するのに数日かかりました😂

今後このまとめがお役に立てたらと思います。


今日はここまで〜✨






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看護師向けなのでかなりわかりやすく、ICUと書いてますがオペ室で必要なモニタリングの知識はこれ一冊で十分です。
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