オペ室ナースの勉強blog

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筋弛緩薬の作用機序と副作用と代謝、分かりやすくまとめました!

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今回は筋弛緩薬についてがっつり勉強したいと思います!

ちょっと筋弛緩薬の小話


リーダー業務の日で私がオペについてたわけではありませんが、先日めっちゃハラハラした事件がありました。


ダヴィンチ(ロボット支援手術)のオペ中、別の病院から見学も来ているのにちょっと出血しだしてしまい、先生も焦っていたところ
なんとまさかのバッキング!


麻酔科はジュニアレジデントとオーベンの二人付きでしたが
なぜか二人とも部屋にいない!


ということでそこについていた外回りさんからリーダーの私に
「誰でもいいから麻酔科を呼んでください!」と頼まれたのですが

そこについていた麻酔科の先生とは連絡がとれず、その日の麻酔科のリーダーの先生は神経ブロック中で手が離せない状況。


で、私が麻酔科の医局に連絡している間に隣の隣の部屋をその外回り看護師が覗いたら
担当していたジュニアレジデントの先生とオーベンの先生がたまたまいたらしい。


大急ぎで部屋に戻ってもらったけど、まさかの点滴も終わってて、点滴を変えるまで筋弛緩もIVできず

外科の先生たちはバッキングしているせいで出血が止められないから、めっちゃイライラしながら手を止めて待ってるし

そりゃーもう最悪の雰囲気でしたよ。


ダヴィンチのときにバッキングしたら鉗子が臓器などを傷つけてしまうかもしれないから全部抜かないといけなくなるし
本当に気をつけてほしいですね…


さて話は変わって、今日はバッキングを起こさないために筋弛緩薬の勉強をしていきましょ〜

過去問① 筋弛緩薬の基礎を学ぼう


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解説がてら説明していきます。

筋弛緩の種類 脱分極性と非脱分極性


筋弛緩薬は脱分極性と非脱分極性の2種類に大別されます。


脱分極性筋弛緩薬はスキサメトニウムのみなので、eが正解です。

ロクロニウム、ベクロニウムは非脱分極性筋弛緩薬で
スガマデクスとネオスチグミンは拮抗薬ですね。



筋収縮が起こる仕組みって、教科書読んでも難しいですよね。

今回めっちゃ簡単な言葉で誰でもわかるようにまとめたつもりですが、
詳しい作用を知りたければテキスト見てください(笑)



まず神経から命令信号を受けると
神経終末からアセチルコリンACh)が放出されます。

放出されたAChは、筋細胞のACh受容体に結合し、筋収縮がおこります。

この結合を阻害するのが、筋弛緩薬です。


脱分極性筋弛緩薬

スキサメトニウムの作用

脱分極性筋弛緩薬であるスキサメトニウム(サクシニルコリン:SCh)

AChと化学組成が似ているためAChと同様にACh受容体に結合し、一時的な筋収縮を引き起こしてから
脱分極を起こし終板と筋膜が電気的に遮断されることで筋弛緩作用を得ます。

なので投与後一度全身が筋収縮するんですね〜💡

そしてSChが細胞外液に拡散すると、電気的な遮断は終結し、SChは血液中にある血漿コリンエステラーゼによって分解されます。


スキサメトニウムの特徴と副作用


スキサメトニウムは作用発現が早い反面副作用が多いため、現在は緊急気道確保の使用に限られてきています。


副作用は、心臓のムスカリン受容体刺激(ムスカリン作用)により、徐脈、心停止が発生することがあります。

特に小児と思春期の患者さんは発生率が高いと言われています。


その他の副作用として
筋攣縮、高K血症、脳圧亢進、血圧上昇、胃内圧上昇、悪性高熱症の誘発、アナフィラキシーなどがあります。


心室細動を引き起こすほどの高K血症を生じることがあり
高K血症の生じやすい広範囲熱傷や筋挫滅、上位および下位ニューロン障害、破傷風では禁忌です。


脳圧亢進状態の方や血圧を上げたくない場合にも使えません。


悪性高熱症についてはまた今後詳しくやりますね。


非脱分極性筋弛緩薬の作用


次に非脱分極性筋弛緩薬についてです。

脱分極性筋弛緩薬はSCh自体がACh受容体に結合していましたが
非脱分極性筋弛緩薬はAChが結合しないようにACh受容体にフタをするイメージです。


すべてのACh受容体のうち75%以上非脱分極性筋弛緩薬で占拠されないと筋弛緩効果はまったく発現しないので、安全域が広い薬物といえます。


ただスキサメトニウムよりも作用発現に時間がかかります。

そしてスキサメトニウムは作用持続が10分程度ですが、非脱分極性筋弛緩薬は1時間程度は持続するため
術後の残存筋弛緩により呼吸器合併症を誘発することがあります。


非脱分極性筋弛緩薬の副作用


副作用は少ないですが、アナフィラキシーの頻度は麻酔薬中最多と言われています。

パンクロニウムは心ムスカリン受容体遮断作用により、頻脈を生じることがあります。


非脱分極性筋弛緩薬の代謝


ロクロニウムは代謝を受けずに未変化体のまま肝臓や腎臓より排泄され

ベクロニウムとパンクロニウムは肝臓と腎臓で一部代謝され、筋弛緩作用を有する代謝産物を生成し、胆汁中あるいは尿中から排泄されます。


腎不全では蓄積することがあり筋弛緩効果に影響するため注意が必要です。


筋弛緩薬の拮抗薬と注意点


筋弛緩薬の拮抗薬には、コリンエステラーゼとスガマデクスに大別されます。


コリンエステラーゼには、ネオスチグミンとエドロホニウムがあります。


アセチルコリンエステラーゼの作用を一時的に抑制し、AChの分解を阻害しAChの濃度を高めることで、非脱分極性筋弛緩薬によるACh受容体の占拠を解きます。


どの非脱分極性筋弛緩薬にも効果があります。

(ちなみにスキサメトニウムに拮抗薬はありません)


ムスカリン作用による徐脈、気管支痙攣、悪心嘔吐、分泌物亢進などを生じるため、喘息患者には禁忌となります。

また、これらの副作用を予防するため、必ず抗コリン薬であるアトロピンを併用します。

(アトワゴリバースという商品にはネオスチグミンにアトロピンが付加されています)


過量投与により、スキサメトニウムと同様の筋弛緩作用を発現させることもあります。



スガマデクスは、ロクロニウムと1:1の複合体を形成し、ロクロニウムがAChに結合できなくすることで、拮抗が可能となります。

形成された複合体は解離することなく腎臓より排泄されます。


ロクロニウムと同じステロイド型のベクロニウムも拮抗できますが、パンクロニウムは拮抗できません。


テキストには再クラーレ化(拮抗後に再び筋弛緩作用が出ること)がないと記載されてるけど、この間うちの病院であったんだけど…

(過去の記事参照↓)
molsama.hatenablog.com

詳しく見てないけど、よっぽど多量投与だったんでしょう…


過去問② まとめ

ここまで振り返って、最後に一問解いて終わりましょう。

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4、5で答えはeでした。




今日はここまで😆






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