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全身麻酔後になかなか意識が戻らない…覚醒遅延の要因は?

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全身麻酔後の覚醒遅延や覚醒後の興奮は
みなさんも度々遭遇し、対応に悩むことも多いのではないでしょうか?

先々を予測した看護をしていくために、それらがなぜ起こるのか勉強したいと思います😊


🍀この記事は3分程度で読めます🍀

そもそも覚醒遅延とは?

近年の麻酔薬は改良されて排泄や代謝が速やかになってきているので、ほとんどの場合予想された濃度や時間で麻酔から覚醒しますが

予想を超えて意識や反応が回復しないことを覚醒遅延と呼びます。


覚醒遅延の要因① 患者要因

高齢者

高齢者は身体機能や脳神経活動が低下しているため、覚醒遅延を引き起こすことが多いです。

中枢神経系の疾患

脳に何らかの器質的疾患がある場合、覚醒遅延の要因となります。


神経科・精神科受診などで向精神薬抗不安薬・鎮痛薬などの麻酔薬と相互作用がある薬物治療を受けている場合も影響を受けやすいので注意しましょう💊

代謝・排泄機能低下

心機能や甲状腺機能低下などの基礎代謝低下
肝機能低下による薬物の代謝機能低下
腎機能低下や透析患者のような薬物の排泄機能低下などでは

薬剤が遷延しやすいため覚醒遅延の要因となります。

呼吸機能障害

吸入麻酔薬の場合、排泄に時間がかかる場合があります。
詳しくは後述しますね✨

覚醒遅延の要因② 麻酔要因

A.前投薬

近年少なくなってきていますが
手術前の鎮静や不安を軽減する目的で麻酔前投薬が投与されることがあります。


短時間作用型に分類される薬剤だとしても、個人差があり消失半減期が数時間以上になることもあり、覚醒遅延の要因となります。


前投薬による覚醒遅延が疑われる時は
ベンゾジアゼピン系薬の拮抗のためにフルマゼニル(アネキセート®️)を投与することもあります。

たたフルマゼニルの効果持続時間はそれほど長くないため
効果が切れた時、残存薬により再び意識が低下することもあるので注意が必要です。

B.薬理学的な影響

全身麻酔は近年バランス麻酔で色々な薬剤を組み合わせて使うので、原因の特定が難しかったりします🤔

鎮静薬と鎮痛薬の相互作用により効果が増強されていることもあります。


鎮静薬(静脈麻酔薬)

静脈麻酔薬はその作用に個人差が大きい系統の薬物です。

インフュージョンポンプなどで濃度計算していても、推定濃度からかけ離れていることもあります。


また静脈麻酔薬の代謝や排泄は各臓器や手術の影響を受けることがあります。

鎮静薬(吸入麻酔薬)

吸入麻酔薬は呼気濃度を実測することで正確に投与濃度管理をすることが可能になってきてはいますが

呼吸機能低下や肺自体に問題がある場合排泄に時間がかかることがあります。


一度覚醒したと思われても、その後換気量低下があると、組織に残存した薬物が血液中に分布し作用が再び増強することがあるので注意。

特に長時間、高濃度の投与を行った場合、全身の組織に分布した薬物の排泄に時間がかかります。

鎮痛薬(麻薬 )

麻薬は作用の個人差が大きい薬剤のひとつであり
同じ効果を得るための必要量は、最も少ない人と多い人で10倍程度も差があると言われます💡

総投与量と、どのタイミングで用いられるかによって影響は大きく異なり
特に長時間作用型の薬剤が終了直前に用いられている場合は効果が遷延することがあります。


じゃあ短時間作用型なら問題ないの?というと、そういう訳ではないのです。

レミフェンタニル半減期は3~5分と短いですが
投与濃度が高い場合は投与中止から覚醒する濃度に達するまで半減期に比べて長い時間を要することもあります。

呼吸回数の減少は麻薬の特徴なので覚えておきましょう✨

覚醒遅延のために拮抗薬(ナロキソン®️)を使用することもありますが、鎮痛効果も無くなってしまうので注意しましょう💦

局所麻酔薬

硬膜外麻酔併用時なら脊髄くも膜下投与になっていないか確かめます。

また局所麻酔薬の投与量が大量になった場合や直接血液中に投与された場合は、局所麻酔中毒や意識障害を引き起こすことがあります。

筋弛緩薬

筋弛緩薬自体は意識に影響しませんが、効果の残存により反応の低下、呼吸量の著しい低下が起こることがあります。

投与経過と、筋弛緩モニターを用いた評価が大切です。

C.生理学的要素

術前よりも生理学的な状況を悪化させないことが大切です。

血糖値

低血糖は意識状態に大きな影響を与えます。
異常な高血糖は昏睡を引き起こすこともあります。

体温

低体温は脳神経の活動を低下させるとともに
全身の臓器活動を低下させ薬物の作用に変化を及ぼすことで覚醒遅延を引き起こします。

酸塩基異常

アシドーシスは細胞内の代謝反応を抑制し、脳神経や代謝機能に影響する覚醒遅延を引き起こします。

アルカローシスも時に意識状態に影響を与えます。

電解質異常

低ナトリウム血症は意識状態を低下させます。

膀胱鏡や子宮鏡で電解質を持たない還流液を使用する場合は特に注意しましょう。

※余談ですが、ナトリウムの補正を急速に行うと浸透圧の差により神経細胞が傷つけられ不可逆的な脱髄症候群(麻痺などの中枢神経障害)が起こることがあるので注意。

換気状態

低換気は吸入麻酔薬の排泄遅延やアシドーシスを引き起こし覚醒遅延の原因となります。

疼痛や筋弛緩薬の残存により過換気になりアルカローシスになることもあります。

脳神経障害

麻酔中の脳灌流低下により術後に脳神経機能の低下が遷延することがあります。

また手術中に発生した脳梗塞脳出血によって起きている覚醒遅延は緊急対応が必要になります。

疑われる時や原因不明の覚醒遅延が続く場合は頭部CT検査を行い迅速に対応しましょう!

覚醒遅延の要因③ 手術要因

高度侵襲手術により患者は大きなストレスを受けます。

長時間手術は薬剤の投与量が増え、覚醒遅延のリスクが上がります。

また、長時間になると薬物の移行に時間がかかる臓器に徐々に薬物が蓄積されていくため
投与中止後も血液中に移行し作用が遷延します。

大量出血時は各種臓器が低灌流状態となっていることがあり、覚醒遅延の原因となります。

中枢神経系の手術は意識そのものに影響を与えることもあり、また広範囲に及ぶ手術も侵襲が大きくなり覚醒遅延のリスクが上がります。


覚醒時の興奮

術前の強い緊張が引き起こす

小児は術後暴れること多かったりしませんか?

小児は覚醒時に興奮状態となる割合が高いという研究結果が出ています。

適切な麻薬や鎮痛薬の使用により興奮の発生を減少させることが出来るので、麻酔科の先生の技量が大きかったり。


成人でも術前に強い緊張状態であったり精神疾患認知症がある場合
また難聴、視覚障害、コミュニケーション障害など周囲の状況把握が困難な場合、覚醒時の興奮を引き起こすことがあります。

我慢してた人ほど抑えがきかなくて爆発しちゃうんですね〜🤔

薬の影響も大きい

高度侵襲手術、脳外科手術では覚醒時の興奮を引き起こすことがあります。

また鎮静薬は抗不安作用や意識を低下させる作用を持つ反面、理性的なコントロールを失わせる脱抑制の状態となり、逆に興奮を引き起こすことがあります。

鎮静薬や鎮痛薬の拮抗薬投与によって急速に覚醒したり、痛みが出現することで興奮状態となることがあります。

隠れた重大な身体異常に注意

覚醒時の興奮では、運動が見られ声掛けに反応があることにより覚醒遅延よりも甘く見られがちですが

隠れた重篤な身体の異常による可能性を念頭に置いておきましょう。

興奮により意思疎通が難しいため、循環呼吸状態、身体所見の観察、血ガスなどで異常がないか評価すると良いです。

過去問

最後に振り返って解いて終わりましょう😊
周術期管理チーム認定 2018年b問題より。

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覚醒遅延について正しいのはどれか。(3つ選択)

(1)局所麻酔は覚醒には影響しない。
(2)呼びかけに反応すれば抜管できる。
(3)心機能低下患者では覚醒遅延を来たしやすい。
(4)呼吸数 5 回/分の場合,麻薬性鎮痛薬の作用遷延を疑う。
(5)覚醒遅延の原因が特定できない場合は頭部 CT 検査が必要である

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答えは345です。


せん妄は覚醒時の興奮とは分けて考えます。
次回詳しくやりますね。


今日はここまで✨✨






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