オペ室ナースの勉強blog

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中心静脈圧って何?自発呼吸と陽圧換気下でどう変わる?

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今回は苦手な人もきっといるはず?

中心静脈圧(CVP)について勉強しましょう!

中心静脈圧(CVP)とは


静脈系循環の下流である上大静脈と下大静脈とが流入する右房付近の大静脈圧で、右房圧を反映しています。

中心静脈圧は心室の前負荷を反映しており

右心機能、静脈還流量、循環血液量の指標となります。


CVPの測定方法


中心静脈カテーテルを介して圧トランスデューサで電気信号に変換され
CVP値(平均値)が波形と合わせて表示されます。


ゼロ点の変化に注意


圧トランスデューサを腋窩線上の高さに合わせます。

基準点からトランスデューサが1センチずれるごとに圧は0.7~0.8mmHgの誤差が生じます。

IAでも気をつけているとは思いますが
特にCVPは微量な値の変化でアセスメントを間違えてしまうことになりかねないので気をつけましょう。

心臓がトランスデューサより10cm高い:圧が約7mmHg高い ということです。
たった10cmでこれだけ変わります。


CVPの正常値


自発呼吸下で2~8mmHg

陽圧換気下だと胸腔内圧により少し上昇し、5~10mmHgです。

※文献によって多少差はあります。


自発呼吸と陽圧換気下の影響


CVPは血管内圧のみで決定されるのではありません。

胸腔内に存在するため、胸腔内圧や心臓周囲の圧などに影響を受けます。

測定するタイミングにも注意します。


CVP測定の正しいタイミングとは


CVPは自発呼吸、陽圧換気下どちらにおいても、呼気終末に測定するのが

最も胸腔内圧の影響を受けず大気圧に近づくため正確な値といえます。


自発呼吸下では、吸気時には胸腔内の陰圧が強くなり、静脈還流が増加するのでCVP値は高くなります。


陽圧換気時では、吸気時には気道内圧、肺胞内圧が上昇し、平均気道内圧、胸腔内圧が上昇します。

それによって大静脈が圧迫され静脈還流量は減少しますが、肺の血管抵抗が上がるために右房圧は上昇します。


このように吸気時は胸腔内圧の影響を受けてしまうため、それぞれ呼気終末のタイミングで測定するのが最も大気圧に近づくということです。


ちなみに陽圧換気中は呼気終末陽圧(PEEP)をかけることがほとんどですが
PEEPで少し圧をかける分、呼気終末であってもやや値が高くなります。

コンプライアンスが悪い人(COPDなど)はそこまで影響がないけれど
肺が柔らかい人や小児などでは特にCVPに影響すると言われます。


CVPで何が分かるの?

測定値の低下

循環血液量不足(出血、脱水など)

測定値の上昇

右心機能の低下(右室梗塞、右心不全など)

心タンポナーデ

循環血液量の増加(過剰輸液など)


※この通りではないこともありますので後述します。



中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)

プリセップ®️があれば持続測定が可能です。


70%以上は安定(敗血症ショックでは末梢組織で酸素を取り込めず異常に高くなる)

70%以下は酸素供給量低下or酸素消費増加



前負荷の指標になるのはなぜ?


正確に言うと前負荷というのは左室拡張期末期容量で、CVPは右心室の前負荷なのですが

左室の拡張障害や僧帽弁疾患などがなく正常であれば右室と左室の拍出量は同じなわけです。


右房圧は左房圧と連動して変化するので、左室の前負荷、左室の充満圧を推測することができます。


ただ左心機能が悪い時はこの限りではありません。



また、CVPは前負荷の指標になるものの
数値のみで循環血液量を判断するのは難しいです。


静脈系には常に適切な右室機能を保つための代償機能が備わっています。

例えば出血性ショックでは、循環血液量が減少しても交感神経の緊張により

末梢静脈が収縮し静脈還流が増えることである程度CVPを維持します。


反対に体温の上昇や敗血症ショックでは、末梢静脈が拡張し

静脈還流が停滞するためCVPは低下します。




数値のみ見るのではなく、血圧、心拍出量、尿量、呼吸性変動など総合的にアセスメントします。



例えば、血圧が低くCVPも異常低値であれば脱水

血圧が低くCVPが異常高値なら心タンポナーデや右心不全、などと推測し

CVP波形やその他パラメーターを見て判断します。



過去問 中心静脈圧


振り返って解いてみましょう!


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中心静脈圧について正しいのはどれか。(2つ選択)
(1) 左房圧のことである。
(2) 右心機能を反映する。
(3) 呼気終末時に測定する。
(4) 正常値は 10~15 mmHg である。
(5) 前腋窩線上でトランスデューサーのゼロ較正を行う。

********



答えは2、3です。

⑴は右房圧の間違い

⑷正常値2~8mmHgなので間違い

⑸中腋窩線上なので間違い



おまけ CVP波形を読もう


過去問でCVP波形が出てきたことはありませんが

役立つ知識は覚えて損はありません。


正常のCVP波形


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心周期と同期しておもに3つの陽性波と2つの陰性波による二層性の波形を呈します。


(画像はこちらのサイトからお借りしました。)
救急一直線特別ブログ


CVP波形の異常


ちょっと難しいですが参考にしてください。

今後以下の症例でCVPを測定していれば
ぜひ波形に注目してみてくださいね。

心房細動

心房収縮がないのでa波が消失し、c波が顕著に増大します。

等頻度房室解離、房室接合部調律

心房収縮は心室収縮の前ではなく順番が入れ替わり三尖弁が閉鎖しているときに心房収縮が起こるため、
波形の高いキャノンa波が出現します。

心室ペーシング中

拡張期にa波がみられなくなり、収縮期に大きなc-v波が見られるようになります。

三尖弁閉鎖不全

平均中心静脈圧は高くなり、x下降が三尖弁逆流による心房充満のために消失し、幅広で波高の高いc-v波がみられます。

三尖弁狭窄

平均中心静脈圧は高くなり、右房から右室への流入抵抗が増すためにy下降がなだらかになり、a波が異常に高くなります。

心タンポナーデ

心嚢内の血液貯留により心室の拡張が制限され、右房から右室への血液流入が妨げられるため

収縮期x下降が顕著になり、y下降が消失した一層性の波形になります。

収縮性心内膜炎

平均中心静脈圧は上昇します。

a波とv波が増高し、心房から心室への拡張初期の急激な流入により急峻なx下降とy下降となり

心外膜の硬化による流入抑制で拡張中期のh波が生じます。


右室梗塞

右室コンプライアンスの低下を反映してa波が突出します。

また右室乳頭筋の虚血から三尖弁逆流が発生し、cvの複合波となります。

波形が右室圧と似ることで誤解されることがあります。



まとめ


今回はCVPについて勉強しましたが、いかがでしたか?

今までは基準値と比較する値しか見れていなかったという方も多いのではないでしょうか。


これからもたくさん知識をつけてアセスメント力を上げていきましょう✨


次回CV留置に伴う合併症など中心静脈カテーテルの基礎を学びます。
(順番が逆の方が良かったですね!)


今日はここまでー😆






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