オペ室ナースの勉強blog

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抜管できない時ってどんな時?!抜管基準について学ぼう

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前回の記事で、頚部まで広がった皮下気腫で気道閉塞の可能性があるため抜管できなかったという話をしましたが

抜管出来ずにICUに帰って頂くことってありますよね。



心外など早期抜管によってバイタルのコントロールが難しいオペなどでは抜管しないことはありますが

術中トラブルがあったとか気道閉塞のリスクが高いとかの理由で抜管できないことがあります。



今日はそんな抜管基準について勉強していきたいと思います。



抜管できなかった一例


私が昔経験した話ですが

もともと巨舌の患者さんの腹臥位の手術で

運動神経モニタリングをするために術中筋弛緩薬を入れられないのに

麻酔科の先生がバイトブロックやガーゼなどを噛ませていなかったために舌を噛んでしまっていたようで

仰向けになったら巨舌の舌がさらに肥大してしまっていて

鎮静のまま抜管せずICUに帰ったことがありました。



バイトブロックを入れるのは麻酔科の先生の仕事ですが、私も確認できていなかったため、インシデントの報告書を書きました。

患者さんにも家族さんにも申し訳なかったですし
それ以来腹臥位手術はバイトブロックを絶対気にしてます。怖い。




普段の手術でもみなさん抜管基準は確認しているかもしれませんが
今日は復習もかねて勉強していきましょう!





過去問 抜管基準とは


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答えはeです。 解説していきます。



深麻酔での抜管はなし寄りのあり


aの深麻酔での抜管が禁忌かどうか。


禁忌だと思う方もいるかもしれませんが、実はそういうわけでもありません。



抜管の時の気道反射でバッキングをすると患者さんは苦しいので血圧が上がりますよね。

それにより再出血してしまったら場合によっては命に関わります。


頚部のオペで再出血してしまい気道閉塞してしまうとか、頭蓋内血腫除去をしたのに再出血してしまうとか…


あと麻酔覚醒時は力が入って気管チューブを噛んでしまって気道閉塞してしまうこともありますよね。

そうならないようにバイトブロックを噛ませたりするのですが、舌で押し出されて外れてしまうことも珍しくありません。

閉塞されたままだと吸気時陰圧により肺水腫になるリスクもあります。


このような合併症を起こさないように、あえて深麻酔で抜管することもあります。




でも深麻酔で抜管すると抜管後に呼吸が止まってしまうかもしれませんよね。

マスク換気をすればいいのですが、抜管後に舌根沈下や喉頭痙攣などにより換気が難しくなることもあるので

デメリットを踏まえた上で深麻酔での抜管を選択することはありますが
基本的には自発呼吸が十分にあることを確認してから抜管するべきですね。


禁忌ではないのでaはバツです。


咽頭パックを抜いたか確認


次にbの咽頭パッキングについて。


ご存知の方も多いかもしれませんが

耳鼻科や歯科の手術などで、出血が気管や食道に流れ込まないように
咽頭にガーゼを詰めておくことを咽頭パッキングと言います。



でも問題文のように、抜管したあとに咽頭パッキングを抜いてたら遅すぎますね。

手術後に抜去し、口腔内吸引をしてから抜管します。

もし抜管後もそのままにしていたら、溜まった血液が気管に流れて誤嚥するかもしれませんし、患者さんも苦しいです。


ということでこれもバツ


余談ですが過去に咽頭パックが胃に落ちてしまった事例を聞きました。
抜去したか必ず抜管前に確認しましょう。



舌根沈下は胸郭だけでは判断できない


次にc、抜管後胸郭が動いていれば舌根沈下はないのかどうか?


胸郭が上がっているかどうかは呼吸の指標のひとつではありますが

通常であれば横隔膜が自然と下がって(胸郭が上がり腹部も膨らむ)息を吸えるのに

舌根沈下で気道が閉塞すると、なんとか息を吸おうとして陥没呼吸となったり
胸郭が上がるけど腹部が凹む動きになることがあります(奇異呼吸)


なので胸郭の動きだけでは舌根沈下を評価できないことがあるので、cもバツです。


軽度ならいびきで分かりますよね。
無呼吸、陥没呼吸、SpO2の低下などがあれば、舌根沈下を疑い対処しましょう。



舌根沈下を解消するには。肩枕はだめ?


続いてdの枕を使用することは舌根沈下の対策に有効かということですが


肩枕を入れることで舌根沈下を解消できるという文献もありますが

未覚醒で舌根が弛緩している場合は、
肩枕で頸部を過伸展させることでかえって上気道閉塞がおこり、舌根沈下の危険が上がると言われています。



抜管時に舌根沈下したら下顎を上げたり経鼻エアウェイを入れるのと

体位はセミファーラー位にするのが最も効果的です。


なのでこれもバツです。



刺激をしない状態で自発呼吸を確認する


最後にeですが

意図的に刺激を与えずに自発呼吸を観察することはとても大切です。


麻薬が残存している場合、刺激がなくなると呼吸数が少なくなります。


抜管の時は声掛けをして呼吸をしっかりしていたのに
抜管して声掛けをやめたら呼吸数が一気に低下してしまうということがあるので

声掛けをせずに呼吸が安定しているか確認する必要があります。


ということで、答えはeでした。




基本的な抜管基準まとめ


最後に基本的な抜管基準についてまとめると


意識…呼名開眼、従命反応(離握手など)


呼吸…十分な自発呼吸(呼吸数10-25回/分、1回換気量5ml/kg以上)、口腔内・気管内に分泌物がない、気管吸引などによる気道反射(バッキング)がある


循環…血圧、脈拍が安定している


筋弛緩作用の消失…頭部保持5秒間/手を強く握れる/舌を前に出すなど、TOF比0.9以上、DBS(ダブルバースト刺激)の減衰がない




これらを観察した上で抜管出来るのが理想ですが

せん妄になっていたり、確認している間に患者さんがずっとバッキングして苦しそうにしていたら

状況に応じて意識の確認はそこそこに、呼吸が安定しているかだけ確認して抜管することも多いですね。






抜管できるかどうかポイントを抑えて

看護師も一緒に観察していきましょうね。



今日はここまでー😆




挿管についての記事もどうぞ✨
molsama.hatenablog.com





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