動脈カテーテル(Aライン)はなぜ必要?基礎から学ぼう
今日は動脈カテーテルを基礎から勉強したいと思います。
いわゆるAライン、IAラインと呼ばれるやつです。
それなりに大きな手術室に勤務していればほとんど毎日見ていて身近なもんですが
重症例のない病院の方ならあまり見ないという方もいますかね?
身近で手軽のようだけど、何でもかんでも入れりゃいいってことではありません。
動脈カテーテルの基礎を学ぼう
動脈カテーテルの適応
そもそも動脈カテーテル挿入の適応とは何でしょうか。
①血圧変動をリアルタイムで知る必要のある場合、血圧変動を極力避けたい場合、血圧の変動が予想される症例
例えば、心臓血管手術とか、血行動態の不安定な症例とか、侵襲の大きい手術などですね。
非観血的血圧測定法で連続測定はカフを膨らませる間のタイムロスもあるし
内出血してしまったりするので長時間の測定には向きません。
②頻回の動脈血採決が必要な場合
呼吸状態の悪い患者さんや代謝疾患の管理が必要なとき、出血が予想される手術などですね。
③非観血的血圧測定が難しい場合
熱傷や外傷などで四肢に血圧測定用カフを装着することができない場合です。
これらの適応を満たしていなければ入れる必要はないわけです。
動脈に穿刺しているわけですから、それなりに合併症がありますから、リスクを考慮した上で行います。
動脈カテーテル留置の合併症
合併症とは。
合併症①虚血・閉塞
閉塞によるリスクを考えるとAllenテストをするべきかもしれませんが
私の病院ではIA確保ではAllenテストをしないことの方が多いです。
太いシースを入れる場合は別ですが。
今はAllenテストの意義は薄いとも言われていますね。
ただAllenテスト陽性の場合にもし動脈が閉塞すると、末梢血管が閉塞して最悪壊疽になる可能性もあるので
Allenテスト陽性の場合は動脈カニュレーションはできれば避けるべきです。
特に気を付けるのは尺骨動脈から留置する場合だと思います。
Allenテストについては下記を参照ください。
複数穿刺を避ける、適切なカテーテルサイズの選択、長期留置をしない、抜去後の適切な止血などが予防するために大切なことです。
合併症②仮性動脈瘤、動静脈瘻
外科的処置が必要になることもあります。①と同様に複数穿刺を避け適切な止血を行うことが大切です。
合併症③感染
あまり手術室で刺入部の感染兆候を確認することはないかもしれませんが
術後トランスデューサやフラッシュ器具などは96時間ごとの交換が推奨されています。
合併症④出血、血種
出血傾向のある患者さんは注意です。抜去後の止血もきちんと行うようにしましょう。
合併症⑤末梢神経障害
知覚障害、正中神経麻痺、手根管症候群などです。
動脈カテーテルの留置部位
では次に動脈カテーテルの留置部位について。
基本的には橈骨動脈が第一選択です。
手技も用意で合併症もほとんど起こらないですし、固定しやすく管理が簡単です。
橈骨動脈で無理となったら上腕動脈から入れるのをよく見ますね。
その場合ワンサイズ長めのカテーテルを選択することが多いです。
大腿動脈から入れることも多いです。手との圧較差を見たり、ショック時など末梢の動脈で脈が触れにくい場合などに用います。
その他、尺骨動脈、腋窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈、浅側頭動脈などなど。
余談ですが、体側固定し手が出てない状態でIA確保をしなければならない状況になったとき
私の経験上、ドレープの下にもぐりこんで体側固定を外して手を出して、橈骨動脈からIA確保する先生が多いのですが
スッと浅側頭動脈から確保した麻酔科の先生を見たときは、かっこいい!と思いました(笑)
留置部位が心臓から離れるほど、収縮期圧は上昇し脈圧は大きくなり
平均血圧はやや低下し、圧波形は収縮期成分が尖り、大動脈弁閉鎖ノッチは不鮮明となります。
圧トランスデューサの位置
あと圧トランスデューサの位置。これよく出題されるやつ。
中腋窩線上に合わせます。覚えておきましょう~。
過去問
ということで、ここで過去問を解いてみたいと思います。
動脈カテーテル留置に関して正しいのはどれか。
a 留置部の感染率は中心静脈カテーテルよりも高い。
b 橈骨動脈では通常 18 ゲージのカテーテルを挿入する。
c 橈骨動脈カテーテル挿入時は Allen テストが必須である。
d 足背動脈では橈骨動脈よりも収縮期血圧が高いことが多い。
e 動脈圧カテーテルのフラッシュ液には 5%ブドウ糖液を使用する。
解説
答えはdです。解説していきますね。
a :感染率はCVのほうが高いです。IAよりも長期間留置しますからね。
CV留置患者さんの約5%に感染を合併するそうです。これってかなり高確率じゃないですか?
b:通常は20~22Gで確保します。
橈骨動脈に18G、やろうと思ったらできると思います。
私の病院ではカテーテルの手術で橈骨動脈から4Frのシースを留置することがありますが、4FrってGに換算すると18Gよりちょっと太いくらいです。
ただ合併症のリスクもぐんと上がりますから、Aラインを18Gで確保するってことは普通は無いですね。
22Gのほうが手技が容易で血管閉塞などの合併症も少なく、患者さんの苦痛も少ないです。
細い分採血で溶血しやすく、採血に時間がかかるのがデメリットですね。
波形の信頼度が20Gの方が高いともいわれますがどうなのかな。
私の病院の心臓血管外科の手術では20Gを原則としています。
c:上述したように、Allenテストは必須ではありません。
d:橈骨動脈よりも足背動脈の方が心臓から遠く血圧が高くなるので正解です。
e:ブドウ糖にするメリットありますかね?ヘパリン入りの生食でお願いします。
インスリン感受性の低い人にブドウ糖を適当にフラッシュして高血糖になったら困りますし。
あとヘパリンは原則入れます。
入れても入れなくても血栓のできる確率に差がないとかいう文献を見たことはありますが…
はい、ということで今日は基礎編でした!
動脈圧波形などについては後日詳しくやりたいと思います。
今日はここまで~!😆
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