ラパの気腹による体への影響とは。循環と呼吸はどう変化する?
今日は気腹による体への影響について学んでいきたいと思います。
話がそれますが
今日私はdaVinci(ダヴィンチ)というロボット手術の前立腺全摘に
午前と午後の2件続けてついてました。
準備が大変なのに先生によってはオペが1時間半ほどで終わっちゃいます。
あっという間です〜。現代技術すごい。
私の病院では泌尿器科が一番最初にダヴィンチを始めて
今は前立腺全摘、腎部分切除、膀胱全摘をダヴィンチでやっています。
ウロが今でトータル550件くらい。
呼外、婦人科、消外もダヴィンチでやっています。
正直に書きすぎて特定されるかも(笑)
ダヴィンチに限らず医療器具も術式もどんどん新しくなって
その都度ついていかなきゃいけないのが大変ですよね。
最近はラパばかりで、開腹がかなり減りました。
例えば肝臓切除や広範子宮全摘など
昔は開腹が当たり前だったのが最近はラパでやるようになって
すごい時代の変化だなと思います。
というかそのまた昔はラパなんて無かったわけですもんね。
さて今日はそんなラパについてしっかり勉強していきたいと思います。
気腹による体への影響ってちゃんと理解できていますか?
過去問① 気腹による影響
問題を解いてみましょーう!
125で答えはbです。
解説しながら学んでいきましょう!
尿量は減少する
①気腹で圧がかかると大静脈の圧迫や静脈抵抗の増加により静脈還流が低下し
腹腔内臓器の血流減少がおこり、腎血流が低下するため尿量が減少します。
PET CO2が上昇する
②気腹はCO2を送気していますが、CO2は血液に溶けやすいので
呼気終末二酸化炭素分圧(PET CO2)が上昇します。
↓こちらも参考にしてください。
molsama.hatenablog.com
気道内圧が上昇する
③気腹によって肺が膨らみにくくなり、気道内圧は上昇します。
分時肺換気量を増加させたり頭低位になるとさらに気道内圧が上がるので
肺の圧損傷に注意しなければなりません。
心拍出量は低下する
④ ①に書いた理由により心拍出量は低下します。
片肺換気になることがある
⑤気腹により胸郭が押し上げられて、気管分岐部が頭側に少し移動します。
それにより片肺換気になることがあるので気をつける必要があります。
過去問② 腹腔鏡手術の麻酔管理
もう一問いってみましょ〜
45で答えはeです。
解説しますね。
十分な筋弛緩が大切
①腹腔鏡のオペ中にバッキングすると
ラパの鉗子などで臓器損傷してしまうリスクがあるので、筋弛緩は十分に入れましょう。
(以前鎮静を深くすればバッキングは起きないと話す麻酔科の先生の話をしましたが、基本は筋弛緩は入れます)
腎血流量は低下する
②さきほどの問題で解説したように、腎血流は低下します。
亜酸化窒素を使うと視野が狭くなるかも
③亜酸化窒素は閉鎖腔にある気体を膨張させる作用があり
それにより腸管ガスの膨張や空気塞栓の発生を助長させることがあります。
ですが、視野の改善のために入れることはありません。
むしろ腸管が膨張するせいで視野が狭くなるかも。
ちなみに昔、二酸化炭素の代わりに亜酸化窒素を気腹に使っていた時代があったそうですが
助燃性があるため、腸管が破れて漏れ出たメタンガスに電気メスが引火した事件が海外であり
使用しなくなった背景があるそうです。
亜酸化窒素についてはまたいつか詳しくやりますね!
皮下気腫
④気腹時間が長かったり気腹圧が高かったりすると、皮下気腫を起こすことがあります。
出血を抑えるために気腹圧を上げた症例では、私も何度も遭遇しました。
他にも長時間の気腹や高い圧により気胸や空気塞栓のリスクが上がります。
↓皮下気腫を知る参考にしてください。
molsama.hatenablog.com
空気塞栓
⑤血管や臓器を損傷したときに気腹圧によって空気が血管内に入ることがあります。
その空気が肺塞栓となると、PET CO2の値が大きく低下します。
心拍出量が低下するためにおこり、それにより同時に血圧も低下します。
昇圧薬や純酸素で対応するとともに
気泡が右房内に留まるよう体位は左下・頭低位にするといいそうです。
↓別記事で肺塞栓について詳しく書いているので
参考にしてください。
molsama.hatenablog.com
ラパ中に大出血したりすると視野が確保できないし
開腹したりでバタバタして大変だし
頭低位になるとさらに合併症も多くて怖いですよね〜
また色んな思い出話を書いていきますね✨
今日はここまで!
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