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手術体位による末梢神経障害はなぜ起こる?体位固定の工夫とは

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前回の記事で末梢神経障害のリスク因子について学びました。

molsama.hatenablog.com



今回はレベルアップして
体位による神経障害と、防ぐための固定方法について勉強したいと思います。

知りたい神経障害がひとつなら目次から飛んでくださいね!


過去問 術後神経障害

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周術期末梢神経障害のなかで尺骨神経障害について,誤っているのはどれか。

a 最も頻度が高い。
b 多くは自然軽快する。
c 男性が女性よりも多い。
d 肘部管の圧迫により起こる。
e 環指・小指の伸展障害が起きる。


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答えはeです。

ちなみに最新の2018年周術期管理チーム認定試験B問題からの引用です。

分からなかった方は、このあとの説明をしっかり読みましょう!



術後神経麻痺の三大要因とは


尺骨神経麻痺の話の前に、術後神経麻痺の三大要因って何かご存知ですか?

体位、手術操作、脊柱管ブロック(硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔など)です。


手術操作や脊柱管ブロックは医師の技術による要因が大きいですが

体位に関しては特に看護師が予防しなければいけません。


体位による神経障害の原因は牽引と圧迫


体位による抹消神経障害は、神経栄養血管を圧迫することによる神経機能障害が主です。


神経はある程度の圧迫には耐えられますが、引き伸ばされることにより虚血が生じ、持続的な圧迫が加わることで血流不足が増悪します。

多くの場合は一時的な障害ですが
圧迫が長時間だったり圧迫の程度が強い場合は
回復に長期を要したり、不可逆的な障害になることもまれにあります。




尺骨神経麻痺


体位による神経障害の中で最も発生頻度が高いです。


皮下の浅い部分を通る神経であることから物理的な圧迫を受けやすいためです。


尺骨神経は上肢の外転により進展し、肘を強く屈曲させることで引き伸ばされます。

肘部管の圧迫が原因

尺骨神経が圧迫される部位は肘部管です。

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肘部管とは肘関節後方の上腕骨内側上顆後面、
簡単に言うと肘の内側の後方寄りってことです。


肘を打って指先までビリッと痺れたことありませんか?そこです!


余談ですが、その当たって痺れる部位のことを
トリビアの泉でファニーボーン(おかしな骨)と言うと知って
ドヤ顔で周りに教えてた記憶があります(笑)


画像はこちらのサイトからお借りしました。
ナースフル 上肢



男女差がある

尺骨神経麻痺は女性よりも肘部管の浅い男性に起こりやすく、割合は男3:女1と言われています。

症状は?

症状は小指、薬指、手の小指側の知覚障害や痺れ

示指~小指の内外転力の低下(指を開く、閉じる)

小指、薬指の屈曲力の低下です。


予後は非常に悪く全く回復が見られず手術が必要になることも…

肘部管症候群に対して尺骨神経前方移行術っていう手術がありますけど、それと一緒の手術みたいですね。

予防するためには

上肢はなるべく体幹に添わせることです。

上肢外転時には前腕を回外位(=仰臥位だと手のひらを上にした状態)もしくは正中位とし
肘が手台の角に当たらないようにパッドを当てることが推奨されています。

腹臥位で腕を広げ前腕を前方にする体位のときは、肘関節を過度に屈曲しないようにします。


腕神経叢麻痺

尺骨神経麻痺の次に多いと言われます。

腕神経叢は頚胸髄から腋窩まで走行しています。

症状は?

症状は上肢全体の運動障害です。

どのような体位で起こるの?

頭を後屈したり首を横に向けると腕神経叢が引き伸ばされ
頭頸部や肩甲~上肢の過度な伸張により損傷されることが多いです。


例えば上肢が90°以上外転していたり
側臥位で上肢固定された状態で体幹に後ろ向きの力が加わったりして

上肢が引き伸ばされている感じです。

予防するためには

腕神経叢麻痺の障害を避けるためには上肢はなるべく体幹に添えることです。

外転はできるだけ小さく、最大でも90°以下になるようにしましょう。


上肢を体に添わせて固定する場合は、手掌は体側あるいは下向きが良いとされます。


また頭低位で使用する肩の固定具は、
肩鎖関節より外側に当てると上腕骨頭により
内側に当てると鎖骨と第一肋骨により腕神経叢を圧迫するため
正しく肩鎖関節に当てるようにします。

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画像はこちらのサイトからお借りしました↓
今村総合病院


側臥位では頭部に高めの枕を入れ、頭部の側屈を避けるようにします。


橈骨神経麻痺

頻度が少ないので簡潔にしますが

上腕橈骨神経叢(肘より5~10cm上腕側全面)が圧迫されることにより起こります。

例えば腕が手台からずれて手台の端に圧迫していたり、長時間離被架に当たっているなどです。

血圧のマンシェットで起こることもあるそうです。



腓骨神経麻痺


下肢では最も頻度が高い神経麻痺です。

症状は?

下垂足といって、足首以下が垂れ下がった状態になります。

どこの圧迫で起きるのか

腓骨神経が圧迫される部位は腓骨頭(膝関節の外側あたり)です。

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予防するためには

仰臥位で下肢が外旋位になることで起きるので
下肢がやや内旋ぎみになるよう膝関節の外側にクッションを入れると良いでしょう。


膝を屈曲させるためにクッションを入れる時は腓骨頭や下腿外側を圧迫しないよう
膝窩を避け大腿下に入れるのが望ましいです。

側臥位では、腓骨頭をメーヨ盤や手術台が圧迫しないよう気をつけましょう。


仰臥位でも側臥位でも、下肢の抑制は膝関節より大腿寄りで固定します。


砕石位ではレビデータが腓骨頭に当たっていないか気をつけて観察しましょう。


外側大腿皮神経麻痺


頻度はそれほど高くないので簡潔に。


神経は上前腸骨棘の内側(鼠径部のあたり)を走っています。

腹臥位手術でフレーム支持台を使う時の圧迫に気をつけましょう。




坐骨神経麻痺

頻度は低いのでこちらも簡潔に。

砕石位において大腿を過度に外転(開脚)させたり
股間接を屈曲した状態で膝関節を伸ばすと

坐骨神経が引き伸ばされるので注意しましょう。



長くなったので良肢位は次回にしますね。


今日はここまで😆





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